楽譜が表現できることとは? プレイヤーの生演奏と共に繊細でロジカルな楽曲を制作する福島諭。 衝撃的な音と作り込まれた世界観を掲げる安野太郎。 コンピュータを駆使し、音楽をつくり続ける二人が楽譜の在り方を模索した。

profile

Host 安野太郎 http://taro.poino.net

作曲家。79年生まれ。2004年情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了。代表作に「音楽映画」「サーチエンジン」「ゾンビ音楽」等。2015年11月にはゾンビ音楽によるオペラ、ゾンビオペラ「死の舞踏」の世界初演を果たした。第2回サウンド・パフォーマンス道場オーディエンス賞、第7回JFC作曲賞1位、第12、17回文化庁メディア芸術祭アート部門入選。これまでに2枚のCD「DUET OF THE LIVINGDEAD」「QUARTET OF THE LIVINGDEAD」をpboxxレーベルからリリースしている。

 

Guest 福島諭

1977年新潟生まれ。作曲家。新潟大学教育学部特別教科(音楽)教員養成課程卒業。IAMAS(岐阜県立情報科学芸術大学院大学)修了。

2002年よりコンピュータ処理と演奏者との対話的な関係によって成立する作曲作品を発表。また、即興演奏とコンピュータによる

独自のセッションを試みるバンド、Mimizのメンバー。2008年より濱地潤一氏との室内楽シリーズにも力を入れており、共同作曲作品《変容の対象》は2009年元旦より開始され現在も進行中である。この作品は第十七回文化庁メディア芸術祭「アート部門」審査委員会推薦作品に選出された。また、個人の作曲作品《patrinia yellow》において第十八回 文化庁メディア芸術祭 アート部門 優秀賞(大賞なし)を獲得。日本電子音楽協会会員。作曲を三輪眞弘氏に師事。

Music After Tomorrow 2016/8/05

思考の痕跡

安野:今日のコンサートは最初に福島さんを呼ぶという話があって、「楽譜の在り方」というテーマは後から決めました。今日のパフォーマンスを受けて、この選択は正解だなと思いました。音楽を聴くときに、空っぽな気持ちで聴くとか、純粋に先入観なしで聴くみたいな姿勢ってあると思うんだけど、今日はテーマを設定してある。すると、「楽譜の在り方」というテーマを設定しただけに、“ちゃんとこの音楽には構造があるんだ”ということを意識して聴くようになる。

 

福島:そうですね、即興とは違う。

 

安野:そうそう、福島さんの音楽は構造を意識して聴く事でより楽しめた。意識的にその構造を捉えながら聴くべき音楽を、福島くんは作っていると思ったので、やっぱりこのテーマに設定して良かったと思いました。

 

福島:ありがとうございました。そう言っていただけると、救われますね。

 

安野:楽譜があることはつまり、ある構造がその音楽にはあるわけで、ここにいるみんながそうだったのかはわからないけど、少なくとも僕は一曲目も二曲目も楽譜はまだ作られてはいないとはいえ、聴きながら脳内で楽譜をつくってた(この日に演奏された福島の作品にはまだ楽譜が無い)。聴いている間にリアルタイムでグラフィカルな構造を脳内に浮かべました。

 

福島:ほんとにそうなんです。たぶん、ゾンビ音楽にしても譜面にしようと思えば譜面になりますよね。

 

安野:そうですね。

 

福島:音をそのままタイムラインによって打ち込んでいくような方法では譜面にはならない曲なんだよね?

 

安野:そうですね。これ(ゾンビ音楽の楽譜)は体中心の譜面。体をどう動かすかっていうことしか書いてない。それがどういう音が鳴るかというピッチ情報は一切書いてない。

 

福島:書こうと思えば素直な五線譜のようにピッチ情報をかける?

 

安野:書こうと思っても難しいですね。書こうと思ったらHzとかで書くのかな、セント値を含めたピッチの近似値を書くのかな?ゾンビ音楽は機械でリコーダーを演奏してるわけだから、空気の流量や圧力によって、いつもピッチが微妙に違ってくるから。ピッチ主体の譜面を書こうとしたらどうやって書けばいいんでしょうね?

 

福島:なかなか書けないよね。

周波数域を録音して、それをフーリエ変換で画像として表示することは可能だけど、その場合は、再現性っていうことを考えると難しいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安野:難しいですね。これを一体誰がどのように再現するんだっていうのはある。

 

安野太郎《Quartet of the Living Dead》 p.1